「ビジネスと人権」は“海外の話”ではない
- 芦原 百合子
- 5月13日
- 読了時間: 3分

フランスで初の国外事業に対する「注意義務法」違反判決
近年、「ビジネスと人権(Business and Human Rights)」への対応が、企業経営において極めて重要なテーマとなっています。
労務管理やハラスメント対策だけでなく、サプライチェーン全体における人権リスクへの配慮が、企業価値や取引継続に直結する時代になりました。
そのような中、2026年3月、フランス・パリ司法裁判所は、化粧品ブランド「イヴ・ロシェ」を展開するロシェ・グループに対し、「企業注意義務法」違反を認定し、損害賠償を命じる判決を下しました。
これは、国外事業に関する「ビジネスと人権」リスクについて、親会社の責任を認めた初の判例として大きな注目を集めています。
詳細は、JILPT(労働政策研究・研修機構)の記事でも紹介されています。
フランスの「企業注意義務法」とは?
フランスでは2017年に「企業注意義務法(Duty of Vigilance Law)」が成立しました。
この法律は、大企業に対して、
自社だけでなく
子会社
委託先
サプライヤー
などを含めたサプライチェーン全体において、
人権侵害
労働問題
安全衛生リスク
環境破壊
などを予防・監督する義務を課すものです。
つまり、「知らなかった」では済まされず、“リスクを把握し、未然に防止する責任”が求められるということです。
今回の判決のポイント
今回問題となったのは、トルコ子会社における労働問題です。
裁判所は、親会社であるロシェ・グループが十分な注意義務を果たしていなかったと判断し、約4万8,000ユーロの賠償命令を出しました。
これまでフランスでは、国内事業に関する注意義務違反の判例はありましたが、国外事業に関して親会社責任が認められたのは初めてです。
この判決は、
「海外子会社だから別会社」「取引先の問題だから関係ない」
という考え方が、今後さらに通用しなくなる可能性を示しています。
日本企業にも無関係ではない理由
「フランスの法律だから日本企業には関係ない」と思われるかもしれません。
しかし実際には、
欧州企業との取引
海外展開
外国人労働者の雇用
サプライチェーン管理
ESG投資対応
などを通じて、日本企業にも“人権デューデリジェンス”への対応が求められる場面が急速に増えています。
特に近年は、大手企業から中小企業へ、
人権方針の提出
労務管理状況の確認
外国人雇用管理
ハラスメント対策
長時間労働防止
などの確認が行われるケースも増加しています。
「人権対応」は法務だけでなく“労務管理”の時代へ
ビジネスと人権への対応は、単なるコンプライアンスではありません。
実際には、
適切な労働時間管理
ハラスメント防止
安全衛生体制
外国人労働者への配慮
相談窓口整備
就業規則整備
など、“日常の労務管理”そのものが人権対応の基盤になります。
つまり、人事・労務の実務こそが、企業の人権リスク管理の中心になっているのです。
BHR推進社労士・JASTI監査対応社労士として
私は、BHR(ビジネスと人権)推進社労士として、企業の人権対応・労務コンプライアンス支援を行っています。
また、JASTI監査対応社労士として、
労務監査
人権デューデリジェンス
外国人労務管理
サプライチェーン対応
是正支援
など、実務面から企業をサポートしています。
「ビジネスと人権」は、一部の大企業だけのテーマではありません。
今後は中小企業にも確実に広がっていく分野です。
だからこそ、“問題が起きてから”ではなく、“問題が起きない体制づくり”が重要になります。
労務管理の視点から、実効性ある人権対応を進めていきましょう。



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